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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)135号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決取消事由について検討する。

1 取消事由(1)について

(一) まず、マイクロ波混合器24、26の作動についてみるに、成立に争いのない甲第二ないし第四号証により認められる昭和五四年七月一三日付手続補正書により補正後の本願明細書(以下、「本願明細書」という。)及び回転ミサイルに用いられる場合の概略図である第二図(別紙図面)によれば、右マイクロ波混合器24、26には、二つの入力が印加されている。一つは、アンテナ20、22からの入力で、他の一つは移相器26、28からの入力である。アンテナ20、22からの入力すなわちアンテナ20、22の出力については、本願明細書上、「アンテナ20および22は振幅および周波数がほぼ一定でその位相はミサイル回転周波数によつて変調されるマイクロ波出力を有している。位相変調の度合は目標に対する視準線とミサイル回転軸との間の角度に直接比例する。この角度はσ-ψであるがまたβ+εでもある。」(甲第四号証別紙一頁二行ないし八行)と記載されている。ここでβがジヤイロスコープスピン軸とミサイル回転軸との間の角度であり、εがジヤイロスコープスピン軸とミサイルからみた目標に対する視準線との間の追跡誤差角であることは本願明細書の記載から明らかである。

(二) 一方、右アンテナ20、22の出力から、後に、ミサイル制御のために誤差出力として取り出したい信号が、追跡誤差εに比例する信号であることは、本願明細書による系全体の説明から明らかである。そして、マイクロ波混合器24、26の出力に関する「マイクロ波混合器24および26の出力にあらわれる変調の量は目標に対する視準線とジヤイロスコープスピン軸との間の追跡誤差εに比例するだろう。」との本願明細書の記載(甲第四号証別紙二頁一〇行ないし一三行)及び混合器が一方の入力信号を他方の入力信号と混合してその差周波数である中間周波数に変換するものであることは良く知られたことであり(このことは弁論の全趣旨から明らかである。)、これらによれば、マイクロ波混合器24、26の中で行われていることは、右アンテナ20、22からのβ+εに比例する位相変調分を有する入力と別途用意したβに比例する位相変調分を有する入力との位相の差をとり、β分を相殺して、必要なεに比例する信号を取り出しているものであることが理解できる。

(三) 右βに比例する位相変調分を有する入力が移相器28、30からの入力であることは本願明細書第二図から明らかである。すなわち、濾波器44の出力は、「フイルタの出力はβに比例する振幅、φGに等しい位相ミサイル旋転周波数に等しい周波数を有している。」「甲第四号証別紙三頁一五行ないし一七行)もので、これを、移相駆動器34を介して、移相器28、30に、互いに逆相で印加し、発振器32の出力の位相を変調して、βに比例する位相変調分を有する出力を、移相器28、30の出力端に用意していることが認められる。なお、アンテナ20、22の「両アンテナ出力の位相変調はたがいに逆の符号をもつている。」(甲第四号証別紙一頁一一、一二行)から、移相器28、30でのβに比例する位相変調分も、互いに逆相の必要があり、したがつて、移相駆動器34は、適当な増幅と、互いに逆相の出力を得るために用いられていることが理解される。

(四) そうすると、本願明細書には被告の指摘する「アンテナ出力は……移相器28および30の出力によつて適当に移相されて」の記載や「発振器32によつて中間周波数に変換され」の記載のようにやや不明確、不十分な記載があることが認められるが、本願明細書及び図面の全記載によれば、濾波器44、移相駆動器34、移相器28、30、マイクロ波混合器24、26の機能は当業者にとつて十分に理解できるものと認められるから、本願が審決の理由の要点2に指摘された点において、特許法三六条四項に違反するものとまでいうことはできない。

2 取消事由(2)について

(一) まず、変調器42の作動についてみるに、本願明細書及び前記第二図によれば、変調器42には、二つの入力が印加されている。一つは、ホール効果発生器60の出力で、これがジヤイロスコープスピン周波数とミサイル回転周波数の和の周波数を持ち、振幅と位相が一定であることは、「出力信号の周波数は、……ジヤイロスコープスピン周波数とミサイル回転周波数の和となる。……この出力信号の振幅と位相はほぼ一定で」(甲第四号証別紙五頁三行ないし九行)との記載から明らかである。入力の他の一つが位置感知コイル38からの出力で、これがβに比例する振幅で、ジヤイロスコープスピン周波数に等しい周波数を有することは、「コイル38から変調器42へ送られる電気信号は大体においてβに比例する振幅、φGに等しい位相およびジヤイロスコープスピン周波数に等しい周波数を有するsine波である。」(甲第四号証別紙三頁九行ないし一三行)との記載から明らかである。また、変調器42の出力に右の二つの入力の和との差の周波数成分が生じ、このうち差周波数成分だけが濾波器44を通過するものであることは、「変調器42の出力は周波数成分の和と差を有し差周波数成分だけがフイルタ44を通過し」(前同一三行ないし一五行)と説明されている。

このように、二つの入力とその出力の性質が明示されている以上、変調器42では、一方の入力であるホール効果発生器60の出力が、他方の入力であるβの情報を荷う信号すなわち利得及び位相調整器40の出力で変調されて、その出力に、側帯波である両者の和と差の周波数の信号を得ていることは、十分に理解できることである。もつとも、第二図において、ジヤイロ磁束が位相及び利得調整器56からホール効果発生器60に接続されているように記載されているが、これが単純な作図上の誤記であることは当事者間に争いがなく、系全体からみても、また、非回転ミサイルに用いられる場合の概略図である本願明細書第三図(甲第四号証第三図)から類推しても誤記であることが明らかであるから、この作図上の誤記があることによつて、前記判断に影響を及ぼすものとは認められない。

(二) 次に、変調器54の作動についてみるに、ここにも二つの入力が印加されている。一つは、ホール効果発生器60の出力であり、これは右(一)において述べたとおりである。

他の一つは、濾波器52を経た振幅検波器(前記第二図においては振幅検知器。以下同じ。)50の出力である。振幅検波器50の入力は加算器48の出力であり、加算器48は、前記1(二)において述べたマイクロ波混合器24、26からの各出力をそれぞれ入力し、「加算器48は元来、(2つの入力間の)位相差を出力において振幅変調に変換する」(甲第三号証別紙七頁二〇行ないし八頁二行)ものであるから、加算器48の出力には、マイクロ波混合器24、26の出力中の周波数がミサイル回転周波数に等しく、変調の度合がεに比例する位相変調分に対応する振幅変調の出力の得られること、そして、この出力につき、「変調は振幅検波器50において検知され、濾波器52において濾波され変調器54によつてスピン周波数に変換される。」(甲第四号証別紙四頁八行ないし一〇行)と説明されているから、変調器54においても、前叙の変調器42と同様に、ホール効果発生器60の出力が、情報を荷う濾波器52の出力で変調されて、側帯波である両者の周波数の和と差の信号が得られ、そのうち差の信号すなわちスピン周波数成分を得ていることが認められる。

(三) したがつて、被告の指摘する本願明細書中の「この出力信号の振幅と位相はほぼ一定で分析的な目的でそれぞれ1と0に設定されている。」との記載や「ジヤイロスコープがミサイル回転率に対向する方向にスピンする」との文章の不明確さはともかくとして、変調器42、54の機能については、本願明細書及び図面全体の記載から当業者であればこれを十分理解できるものと認められるから、本願が、審決の理由の要点3に指摘された点において、特許法三六条四項に違反するものとまでいうことはできない。

3 そうすると、審決はその判断を誤つたものといわなければならないから、取消を免れない。

三 よつて、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容する。

〔編註その一〕 本件における特許請求の範囲は左のとおりである。

運動物体の本体に固定され、予期された目標からエネルギを受け出力信号を発生する受感器、前記運動物体の本体内に装着され、回転磁化ジヤイロスコープおよび位置検出コイルに対するジヤイロスコープの位置および運動物体の向きの変化率を示す信号を発生させる前記位置検出コイルを有するジヤイロスロープ装置、前記受感装置および前記ジヤイロスコープ装置と関連して動作し前記受感器装置からの出力信号および前記ジヤイロスコープ装置の前記検出コイルによつて発生した信号を受け、誤差出力信号および歳差運動信号を発生する信号処理装置、および前記ジヤイロスコープ装置および前記信号処理装置に関連して動作し、前記信号処理装置からの歳差運動信号を受信し、前記ジヤイロスコープ装置の回転磁化ジヤイロスコープをその向きが予期目標の方向と一致するように歳差運動させるジヤイロスコープ歳差運動装置、を含む運動物体用の機体運動減結合器。

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面

<省略>

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